2016年8月17日(水曜日)

専門用語の指導

カテゴリー: - webmaster @ 16時20分01秒

今回は、 jitcoかけはし vol.126から【専門用語の指導】についてです。

監理団体の方や講習の日本語指導員から「専門用語」という言葉をよく聞きます。どのような言葉を「専門用語」と言うのか、個人差もありそうですが、今日は、「日本語の教科書には出てこないけれども、仕事に必要な言葉」を、「専門用語」として考えてみることにしましょう。

アドバイス1

「専門用語」は名詞に限りません。動詞もリストに加えましょう。

「専門用語」と聞いてまず思い浮かぶのは、例えば縫製なら「縫いしろ」とか「しつけ糸」、溶接なら「溶接棒」とか「防塵マスク」のような、作業に直結した名詞の言葉でしょう。これらは、日常生活では使いませんが、仕事では必須の言葉で、当然ながら職種によって異なります。技能実習の現場で働く前に、こうした言葉をいくらかでも学ぶことができれば理想的ですが、母国で日本語を学び始めてから入国後の講習までは、さまざまな職種の技能実習生が同じ教室で学ぶという状態が多いため、仕事に直結した言葉の学習がなかなかできないのが実情です。そこで、監理団体や実習実施機関では、それぞれの仕事に必要な言葉のリストを作って技能実習生に渡しているところがたくさんあります。リストには現場独自の言葉が並んでいて、確かにどれも重要ですが、よく見てみると、リストにある言葉はほとんどが「名詞」なのではないでしょうか。リスト作りにあたって、ここでは、もう一つの別の角度から「専門用語」を見てみたいと思います。

先日、想田和弘監督の『牡蠣工場』という映画を見ました。この監督の一連の作品は、ナレーションも音楽もなく、「観察映画」と称されています。『牡蠣工場』の舞台は瀬戸内海の小島で、牡蠣の養殖と殻剥きを生業とする人々の日常を中心に展開し、後半、中国からの技能実習生2人が、牡蠣工場の仲間に加わります。

こんな場面がありました。網にびっしりとついた養殖の牡蠣を載せた船をロープで岸に固定しようとして、日本人がロープのそばにいる技能実習生に大声で声をかけます。
「ひっぱって!」「ゆるめて!」…この言葉が技能実習生に伝わりません。
こうした「ひっぱる」「ゆるめる」のような言葉、つまり、仕事の作業そのものを表す「動詞」も、「専門用語」として指導する必要のある言葉ととらえることができます。こうした言葉は、日常生活でも使われるために「専門用語」だとは気づかず、技能実習生に当然通じる言葉だと思い込んで日本人が無意識に使っている可能性が高いのです。

先日「日本語指導オンデマンド」で訪問した惣菜を作る現場でも同じような話を伺いました。刻んだ野菜を入れるボウルを洗った後、水滴を拭くように指示したけれど、技能実習生に「拭く」が通じなかったということでした。これも全く同じことで、こんな簡単な言葉がどうしてわからないのかと思うかもしれませんが、技能実習生がわからないのは当然で、「拭く」は技能実習生が知らない言葉、つまり、技能実習生が講習までに使う教科書には出てこない言葉なのです。

アドバイス2

教科書に出てくるのはごく基本的な表現だけ。リスト作りを根気よく。

「ひっぱる」「ゆるめる」「拭く」、子供でもわかるこんな簡単な言葉も教科書に出てこないのかと驚かれるかもしれませんので、ここでちょっと、初級の教科書にはどんな言葉が出てくるか見てみましょう。ここでは広く使われている教科書『みんなの日本語』と、JITCO日本語教材ひろばで提供している『みどり』から動詞を抜き出しました。

はじめに出てくる動詞

起きる 寝る 行く 来る 帰る 休む 終わる
書く 読む 聞く 食べる 飲む 吸う 買う 見る
する ある いる


これらは「動詞」を使った日本語表現を学ぶ一番はじめに出てくるもので、これで18個です。一見して、日常生活で頻繁に使う言葉だとおわかりいただけると思います。また、これらの言葉は、教科書を離れた場面でもよく使うこともあり、それなりに定着が期待できます。それでは次の段階はどうでしょうか。見てみましょう。

次に出てくる動詞

つける 消す 開ける 閉める 出す 入れる
置く 作る 立つ 座る 乗る (雨が)降る


これで12個です。どれも非常に基本的な言葉ではあるのですが、このあたりからは、ある課で1度出てくるだけという言葉が多くなります。たった1度教科書に出てきただけでは、「身につく」レベルにはなかなか到達しません。
ここまでで示した動詞は30語です。これだけでも外国語として覚えて使えるようになるのは大変で、講習終了時の技能実習生がそこそこわかって使える動詞は、よくてこのぐらいだと考えるのが妥当なところです。
こうして見ると、「ひっぱる」「ゆるめる」「拭く」は、やはり、上記の30の動詞と比べれば、それほど基本的な言葉ではないことがご理解いただけるかと思います。つまり、作業の動作をあらわす「動詞」は、ほとんどが「専門用語」と考えることができるのです。監理団体や実習実施機関では、技能実習生の仕事の現場をよく観察してこのような言葉を注意深く集め、「専門用語」として根気よくリストに加えていくことが大変重要です。

アドバイス3

実際の作業を見せつつ言葉を示す。リスト作りもひと工夫しましょう。

仕事に直結した「専門用語」は、お話ししたように、前もって学習する機会が少ない言葉ですし、リストを渡すだけで、後は技能実習生の努力に任せていてはなかなか身につきません。技能実習の現場という、リストの言葉を使った具体的な作業が見られる環境があるわけですから、作業を見せながら言葉を提示する時間を作って指導することで、技能実習生は実感を持って学ぶことができます。
まず、リストにある機械や部品を見せながら、指導員がその言葉を口にします。技能実習生はそれを聞いて繰り返して言います。次に、指導員が機械や部品を使って動作をしながら、動詞を言います。技能実習生は繰り返して言います。このような地道な指導が大切です。

リスト作りにあたっては、言葉だけでなくイラストや写真を載せて視覚に訴えるものにしたり、各自の気づいたことを自分の言葉でメモできる空欄を十分に設けたり、より有用なリストになるように工夫してみましょう。


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